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  • (2022.3.23) ゼミ生8名が卒業しました。

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 山口大学人文学部言語学乾研究室のホームページです。

 専門は言語学 (Linguistics)です。その中でも特に言語類型論 (Linguistic Typology)的アプローチをしています。世界には6千を超える言語が現存していますが、言語構造的には話し手が少ない弱小言語であっても大言語のそれと全く変わりはありません。それらの言語をできるだけ多く観察することを通して、言語の普遍性を探究しています。まさに言語学の永遠のテーマは「言語の多様性と普遍性」ですね。
 もう一つ重要な研究テーマとして、東部アフリカのエチオピア連邦民主共和国にフィールドワークに出かけています。エチオピアで話されている言語は全部で80を超えます。言語の家族を表す語族でいうと、エチオピアにはアフロアジア語族に属するセム系、クシ系、オモ系とナイロサハラ語族の言語が話されていると言われています。しかし、調査があまり進んでいない言語も多く、系統関係に関してもまだよくわかっていないのが実情です。ここ数年毎年、その中のオモ系の少数言語の記述調査を行っています。オモ系もその系統的位置づけがまだよくわからないグループです。エチオピアに限ったことではありませんが、少数言語の多くはちゃんとした文法書もなければ辞書もありません。つまり文字がないのです。全部頭の中にあって、それが代々引き継がれています。そういった少数言語話者たちのために、母語教育教材開発へ向けて具体的な取り組みをすることが最近の研究テーマの一つです。

 「言語学研究室(言語学分野)」(学生の間では旧コースの名残で言情<げんじょう>と呼ばれている)には4年生8名、3年8名(2022年4月現在)が在籍しています。言情の学生気質は、賑やかで騒がしいことで、どういうわけか代々引き継がれていきます。飽くなき好奇心がパワーの源になります。卒論のためにわざわざ海外に言語調査に行く学生もいます。
 新制度では3年生からいきなりゼミ=言語学分野所属になり、同時にコース所属にもなります。「言語学」は、意に介せず、欧米言語文学コースの中に放り込まれてしまいましたが、しかし学問としての「言語学」の研究内容が変わるわけがありません。単なる便宜上の組織と理解しています。
 3年の終わりには就活が始まりますので、実質的な授業は3年生までです。したがって実は2年生が最も大事な時期です。言語学に興味を持った人は、早めに方針を決めて、2年前期から計画的に授業を取ることをお勧めします。新しい制度では本来専門で教えていた授業が「分野入門」や「リテラシー科目」の中に入ってしまっています。言語学に関して言うならば、「分野入門」では「言語学概論(音韻・形態・統語)」「言語学概論(意味・類型・歴史)」と「言語類型論」、「リテラシー科目」では「音声学」「言語と人間」「言語構造と精神世界(隔年開講)」となります。また、2年後期には先取履修科目として「言語学特殊講義」や「言語学演習」が始まります。
 3年次には、「言語学特殊講義」や音韻、形態、統語、意味の各主要分野および言語類型論やフィールド言語学の「言語学演習」を受けることで、自分に合った研究テーマを探すことになります。
 ゼミ生は4年生になると卒業論文を書くため、それぞれ自分の研究テーマを決めなければなりません。言語学の基本的な研究分野は音韻論、形態論、統語論、意味論、それに言語類型論、歴史言語学、社会言語学などです。もちろん地域が限定されているわけではありませんので、自分で好きな言語・方言を研究すればかまいません。しかし、一番大事なことは、ある特定の言語だけ、あるいはある特定の分野だけにこだわるのではなく、ひとつの言語を対象にする場合でも、その背後に世界にある何千という言語を意識し、またある分野をやる場合も言語学全体に興味を持つことです。
 また、言語学の対象言語は日本語やヨーロッパの言語(英語・ドイツ語・フランス語)や中国語だけではありません。いろいろな言語に関心を持つことはこれからの国際人の常識ではないでしょうか。ゼミ生の中には今まで勉強したこともないマイナーな言語や日本の方言調査を研究テーマに選んでいる学生もいます。
 大学というのはアカデミックなところで、研究するところです。卒業してからでも勉強できそうなことをするのではなく、大学でしかできない研究というものを探してみましょう。チャレンジするからおもしろいのです。一見、実社会で意味のないようなことが実は本当の学問の楽しみだったりします。